アイアムアヒーローの謎
ゾンビ好きとして、今年からなるたけレビューしていきたいと思う。
作者は「ボーイズオンザラン」で人気を博した花沢健吾先生
ヤフーの映画講評
アマゾン
2016年に映画化された。
舞台は東京から静岡で、漫画で言ったらアウトレット編までを描いている。
しがない毎日を過ごしている。独り言、妄想は当たり前で、眠れない夜に、何者かが襲ってるくるという
思い込みに精神をやられている。その時のお守りとして、英夫は高校時代の卒業アルバムをめくる。
これだけでだいぶ、英夫が「キテる」やつっていうのがわかる。
この「キテる」っぷりを説明するのに、漫画だとほぼ1巻を費やしている。
ただこれは完全なる布石で、ジェットコースターで言えば、カタカタと最高地点まで気づかずに上がらせる。
そこからのFUJIYAMAばりの鋭角で物語が進んでいく。
ある日、突然に彼女がZQNと呼ばれるゾンビ(正確にいうと、怪しい)に変態する。
ウイルス感染なのか、病気なのか、原因は不明でここら辺はゾンビの正当な文脈を継承している。
ゾンビ本体としては、28日後や28週後に代表される「はやいゾンビ」で、身体能力も向上している。
このはやっさプリが物語の進度に貢献しているような気がする。
英夫は、なんとか「元」彼女を倒し、命からがら東京から逃亡していく。。。
その後、ウォーキングデッドのリックと一緒で仲間に出会ってくんですね。
女子高校生のヒロミ、元看護師のヤブ、、、けど、やっぱ提督ばりに悪いヤツがやっぱいっぱいいるんですよ。
カオティックな世の中じゃしょうがないのだけど、危険安心危険危険安心危険危険みたいな繰り返しなんだよね。
こういう世の中だとどんどん人間って廃れてくじゃない。誰も信用できない!って。
「世界が転覆しても、全く自分が変わらない」
英夫は猟銃の免許を持ってるけど(この銃が生命線になるのだけど)
初期の頃は全く使えない。公共の場で銃を出すと銃刀法違反になる、とか。
荒廃したコンビニで、お金の支払いについても気にする、とか。
圧倒的なコンプレックスで、自分はヒーローにはなれなくて、一般人(むしろ、それ以下)だと思っている。
自分自身で思い込んでる。英夫がコンプレックスに陥るのも想像できる。彼は、20歳前後で、一度、漫画賞をとるがそのあとは泣かず飛ばず。そのまま35歳になる。卑屈になるのも仕方がない。(英夫の場合、極端だけど。)
ヒーロー不在の世の中。
少しだけこの作品を現代社会に当て込めると、今の社会ってヒーローがいないと思うんですよね。
これから先の未来は明るいかっていうアンケートでマジョリティの人が「暗い」って答えるような社会で、
社会保障、仕事、年金、介護、国の借金、不安なこととか見えにくいことがたくさんあるんですよ。
その中で、ピンチになったら助けてくれるヒーローって断然いなくて、戦後の暗い時代に外国人をバッタバッタ倒した力道山みたいな。希望を感じることのできるアイコン、一筋の光になるような存在が不在なんだと思う。
不在というか、光が弱い
(いや、相対的には強いのかもしれないけど、圧倒的な不安という暗闇によって飲み込まれてしまう)
そんなイメージがある。
その社会における主人公ってほんと鈴木英夫みたいなやつなんだと思う。なんでもない人。
(英夫はちょっと極端だけどw)
幸か不幸か、一般人にスポットライトが当たる風になってきたんだな。
そこで新しい問いがひとつ。
「持たざるものが、どうこの社会をサバイブしていくのか。」
(自分は漫画のキャラクターとして、持たざる者が好きだということに気づいた。